これまでの、特に日本企業のビジネスは集団を重視して個人を軽視するという傾向が強かったようです。

しかし、今後は企業間のビジネスでも個人のつながりがとても重要になってきます。

というのも、どんな大企業でも、すべて個人の集合体だからです。

そのため、個人の資質で個人と個人の間の信頼関係を深めて人脈を築き、それをもとに企業間のビジネスを行っていきます。

現代のビジネスは、組織の中で個人の能力をアピールする時代になっているのです。

たとえコネがなかったり、お金を持っていなくても、個人の能力さえあれば企業の経営者や役員の人たちにも個人をアピールして人間関係を築いていくことができます。

個人と個人をつなぐために、相手の心をコントロールして人間関係を良好にする技術を身につければ、人脈を広げたり、相手から信頼感を得ることができるのです。

相手の心をコントロールして人間関係を良好にする技術は、ビジネスとの相性が良く、個人のつながりが重要視されている現代だからこそ、ビジネスマンにとって強力な武器になるのです。

あなたも人の心をコントロールすることができる

人の心をコントロールする技術とは、人間の心理的な特性をもとに、相手の態度や行動、あるいは会話などから相手の心の状態を判断していく技術です。

これは科学的な根拠に基づいた技術なので、その仕組みを理解して技術を身につければ誰でも相手の心の状態を判断し、相手の心をコントロールすることができるようになります。

一見難しいと感じるかもしれませんが、決して難しいものではありません。

確かに、学問という観点では、心理学の専門的な用語などがありますが、あなたの仕事のビジネスで有効活用できる技術は、それほど難しいものではありません。

とても簡単で、誰でもすぐに身に付けることができることばかりです。

心の状態を判断して相手の心をコントロールする技術の基本は次の4つです。

①相手の言葉や行動を観察する

②相手の心理を分析する

③相手を理解し相手から信頼される

④暗示を入れて相手を思いどおりに誘導する

相手の言葉や行動を観察する

相手の心理状態を判断するのに最も重要なのが観察することです。

観察するといっても、その対象は1つではありません。

例えば目線や口の動きなどの相手の表情、姿勢やしぐさなどの体の動き、繰り返し使っている言葉や声の調子など、あるいは相手が身に付けているものや持っている物も含まれます。

また観察の対象になるのは、これだけではありません。

こちらの言動に対するリアクションも相手の心をコントロールするのに必要な観察の対象になります。

相手の表情や言葉、行動、リアクションなどを逐一チェックして、それらを総合的に活用しながら相手の心の状態を判断していくのが、相手の心をコントロールする技術の基本です。

例えば相手があなたと話している時の表情を観察するだけでも、相手の心理状態を判断することができます。

具体例としては、あなたの話に興味があり、面白いと思っていれば、目線が頻繁に上下に動いたり、口は軽く開いた状態になります。

逆に興味がなく、つまらないと思っていれば、目線が左右に動いたり、口を固く閉じたりします。

顔全体の中ではほんの小さな変化に見えますが、このような変化を観察しておくだけで、相手の心理状態を推測することができるのです。

また、カフェで雑談したり、仕事で打ち合わせをしたり、同僚と飲み会をした時には、相手の持ち物を観察するのも効果的です。

あなたと一緒にいる人がバックから携帯電話や財布などを取り出すときに、中が少し見えたりすることがあれば、そこを見逃さずに観察します。

例えば、バックの中に文庫本の表紙や背表紙が見えることがあるでしょう。

そんなときに相手がどんな内容の本を読んでいるのかという情報を一瞬の観察で得られるのです。

もしもあなたが同じ本を読んでいれば、さりげなく背表紙を確認した後、少し間をおいてから相手にこんなふうに話しかけてみます。

「そういえば、最近すごく面白い本を読んだんですよ」

「ふーん、どんな本? 」

「『○○』(相手が持っている本)という本なんですけど、これすごく面白いですよ」

「えっ!、それなら俺も今ちょうど読んでいるところだよ。ほら、これ」。

とスムーズに話が進みます。

このような会話をすることによって、あなたは相手に「自分と同じ感性で同じジャンルの会話ができる人」という印象を持ってもらえるのです。

バックの中から見えた本のタイトルだけでなく、身につけている小物や、使っているペンなどを観察することでも、相手との信頼関係を築くきっかけになるのです。

ここで注意したいのが、バックの中身が見えてもすぐには言わないことです。

というのも、すぐに言ってしまうと、相手のバックの中身を見たことが相手に伝わる可能性が高くなってしまうからです。

また、紙とペンを使いたい時に、それを自分が持っていたとしても、あえて相手から借りるという方法もあります。

「小さい物でもいいのですが、紙とペンをお借りできますか?」

と話を切り出します。

すると、相手は持っているバックを開け、手帳を開いて紙を1枚破り、ペンといっしょに渡してくれます。

そうすることで、バックの中身を見たと思われない様に偶然性を装うという意味もあるのですが、それだけでなく、相手が持っている手帳やペン、バッグの中身などを観察することができるのです。

相手のバッグに入っているものや、バックの中の様子、手帳に書かれているスケジュール等、これだけの情報を知っておくだけでも相手の人間関係や几帳面さ、社交性のなど、相手に関する様々な情報を仕入れることができます。

もしも、幸運にも手帳に挟んでいる名刺が見えたりすれば、その名刺は大半の場合、本人のものか最近会った人の名刺であるはずです。

その名刺のデザインや文字などから、相手がどんな仕事をしているのか、どんな業種の人とつながりがあるのかということも分かります。

この情報を使って、相手が最近会った人の名前や業種を当てる会話を仕掛けることができるのです。

ただ単に名刺を見ただけでも、しっかり観察しているからこそ会話をはずませて相手との信頼関係を築き、人間関係を良好にすることができるのです。

人は本人が思っている以上に、持っているものや表情、言動などに、感情や心理を表しています。

相手が無意識のうちに表した心理情報を、どのようにして観察して生かしていくかが、相手の心をコントロールして人間関係を良好にする第一歩なのです。

観察して情報を集める

観察で最も大切なのは、ただ見ているだけではいけないということです。

ただ見ているだけでは観察したことにはなりません。

例えば、ビジネスマンならほとんどの人が腕時計を付けていて、それを毎日何度も見ているはずです。

それでも腕時計の文字盤に書いてある数字の種類、あるいはメーカー名やブランド名が書かれている位置まではっきりと覚えている人が少ないのです。

つまり、観察するということは見ている回数とは関係がなく、意識して見ているということが重要なのです。

ただ、なんとなく見ているだけでは、大半の人はその記録したものをすぐに忘れてしまいます。

逆に言えば、しっかり意識して観察すれば、たくさんの情報を得ることができます。

また、観察して得られた情報をどのように利用するかということも重要です。

例えば、取引先との商談や交渉が終わった後に、相手が身につけていたネクタイの柄や色を覚えている人はほとんどいないのではないでしょうか。

向かい合って話しているので見てはいるものの、観察はしていないからです。

しかしどんな人であっても、覚えようとしなければ、覚えることができないので、それが当たり前のことなのです。

ですから、意識して覚えるようにします。

そして、商談や交渉が終わった後に、手帳にメモしておけばいいのです。

そうすれば、他のビジネスマン達と差をつけることができます。

それを次に相手と会った時に、相手を褒めるネタとして使います。

相手の身につけているネクタイを褒めるときに、大半の人は「おしゃれなネクタイですね」といいますが、それは当たり前すぎて相手の印象に残りません。

しかし、その相手が前回していたネクタイを手帳にメモしておけば、

「いつもおしゃれなネクタイをしてますね。そのネクタイもいいですけど、この前されていた○○柄のネクタイもとてもお似合いでしたよ」

という感じでネクタイを褒めることができるのです。

これが相手の心に強く印象に残るわけです。

初めてそういう褒め方をされたことで、自分のことをよく見ていてくれたと感心するのです。

相手を持ち上げることで相手を気持ちよくさせて、さらに「こいつは観察力があって優秀だ」というビジネスマンとしての評価につながり、新しい仕事に繋がるかもしれません。

ただ、なんとなく見ているだけでは、大半の人は記憶したものをすぐに忘れてしまいます。

だからこそ意識して観察し、そこから得た情報をどのようにして使うかを考えることが重要なのです。

先に挙げた例で言うと、「ネクタイの色や柄を覚えておくか記憶しておく」「次に会った時に相手を褒める材料として使う」という細かい観察が、良好な人間関係を生み出しているのです。

要するに、相手を観察することは、相手の心をコントロールして、人間関係を良好にするための重要なポイントなのです。

ですから、なんとなく見ているだけではダメなのです。

意識して相手を観察することが大切なのです。

前述したように、相手と会話をする時でも、ただなんとなく相手の顔を見るのではなく、真理や感情が表に出やすい目や口元を中心に観察します。

また、相手の嗜好や個性が表に出やすい手帳やペン、あるいはネクタイなどを覚えておきます。

このように、他の人がほとんど気にしないような細かいところも観察します。

相手を観察するべき情報は、誰でも簡単に手に入ります。

ここで大切なのが、見る人が観察するという意識を持って見ることです。

相手が無意識のうちに表に出した情報を、あなたが意識して拾い集めるのです。

そのような観察力を身に付けることが、相手の心をコントロールして、人間関係を良好にするためには欠かせないという事を覚えておいてください。

観察して得た情報を元に、相手の心理を分析する

観察することは、相手との人間関係を良好にするための第一歩ですが、それではあくまでも相手の情報を得ているだけに過ぎません。

大事なのはその情報から、相手の心理を読み解いて分析することまでを行うことです。

それでは、情報を分析するというのは具体的にはどういうことなのでしょうか。

例えば、誰かと話をするときに、相手が頻繁に使っている言葉や単語を意識して確認します。

私たちは会話をしている間に、相手がよく使う言葉や単語からしか相手の心理を推測することができません。

心の中が直接見えているわけではありません。

そのため、心の中までは見ることができませんが、心の中から出てくるものは見ることができます。

ですから、それを見て分析し、相手に言葉を投げかけて、それに対して返ってくる反応を見ます。

この一連の流れの中で、相手の考え方や思考について推測していくわけです。

相手の会話や持ち物、体と体の距離などから相手の職業や生活環境を推測することができます。

しかし、ただ見ているだけでは、このような情報も、ただ見えたものというだけでしかありません。

観察したものを分析することで、相手の人物像を分析することができるのです。

分析はビジネスにおいても、とても重要です。

プレゼンで提案をした時に、相手がつまらなそうな表情をしていたり、ネガティブな反応をしたら、どんな人でも、手応えがないと感じたり、相手が気に入っていないようだということくらいはわかるはずです。

しかし、大半の人はそこまでで終わってしまいます。

それでは相手の心の中を推測することはできません。

観察した相手の表情や言動などから、「なぜつまらなそうな顔をしていたのか」「それはどういう合図なのか」を、さらに深く分析することによって、次の段階に進めるのです。

手応えがないと感じたら、より具体的な質問を投げかけてみましょう。

それに対する答えが明確かそうでないかで、相手の興味の有無がわかります。

そこで興味がありそうな返事が返ってきたら、それに関する話題や単語を繰り返して、プレゼンを成功させることもできるのです。

相手を観察したら分析をするという習慣を身につけてください。

相手を理解し相手から信頼される

「君だから話すんだけど…」「あなただから言うけど…」と言われると、人は誰でも嬉しいものです。

というのも、「この人には私的なことや大事なことを話してもいいと思われているんだ」と感じるからです。

言い換えれば、「自分は信頼されている」と感じるからです。

このような人間の心理を有効活用することは、相手の心をコントロールして、人間関係を良好にするために欠かすことができません。

相手から信頼してもらうことや、親近感をもたれることは、相手を思い通りに誘導するための重要なポイントとなるのです。

そのための効果的な方法の1つは、会話の中で「打ち明ける」ことです。

しかも、あなたから先に打ち明けることです。

特に初対面の相手で口数の少ない相手の場合には、さらに効果を発揮します。

相手より先に、あなたが自分のことを話すのです。

初対面で私的なことを話してくれたということによって、「この人は信用できる人だ」という心理を相手から引き出すことができます。

さらに、人は自分より先に相手がプライベートな情報を明かしてくれると、無意識のうちに「こちらの私的なことも話さないと、なんだか相手に悪いな」と感じ始めます。

そして、相手も徐々に私的なことを話してくれるようになります。

それによって、相手が「これだけ私的なことをたくさん話しているのだから、自分はこの人を信頼しているんだ」と感じ始めるのです。

このような自己開示は、言ってみれば、相手から情報を引き出すための撒き餌です。

そして、「相手が信頼してくれたから、自分も相手を信頼する」「相手が心を開いてくれたから、自分も相手に心を開く」という心理にさせる手段でもあります。

そのため、自己開示する内容は本当のことでなければいけないというわけではありません。

相手に対して、「あなたに心を開いている」という印象を持ってもらうことが重要なのです。

相手と親しくなれば、相手から信頼される

私たちは、自分と同じ動作や仕草をする相手に対して、親近感や信頼関係を抱きやすいものです。

つまり、人は自分の動きを真似する行為を、自分への行為の表れだと心理的に認識するということなのです。

このような心理現象を有効活用して、人間関係を良好にすることができます。

この方法は、あなたが信頼関係を結びたいと思っている人や、親しくなりたいと思っている人の動きを真似するということだけです。

簡単なことなので、誰でもすぐに実践することができます。

例えば、打ち合わせ中に相手がお茶を飲んだら、少しタイミングをずらしてあなたのお茶を飲んだり、相手がネクタイを直したら、あなたもネクタイを直すということです。

ただし、注意したいのは、相手に「あなたが真似をしているということを悟られない」ようにすることです。

相手の潜在意識に働きかけることで成立するものなので、わざと真似をしていると思われてしまうと、「馬鹿にしているのか?」と思われるかもしれません。

あくまでも相手に感づかれないように、自然に相手の仕草や動きに合わせていくことが大切です。

また、相手とまったく同じ動きをするよりも、相手が左手でコップを持ったら、あなたは右手に持つというように、左右対称に持つことで相手に親近感を抱かせることができます。

このように飲み物で相手と同じ動きをすることは、相手に感づかれにくく、簡単に始めることができるのです。

また、相手が発した言葉の一部を自然な感じで繰り返すといった相手と言葉を合わせる方法や、相手は息つぎするときに、それに合わせて相づちを打つといった相手と呼吸を合わせる方法、相手が持っているものと同じものを持つ方法なども効果的です。

このようにして相手の行動を真似ると、今度は相手があなたの仕草や動きを徐々に真似るようになっていきます。

その時相手は無意識のうちに、あなたと動きを合わせるようになっているのです。

このように、お互いが真似し合うようになると、相手があなたのことを「この人とはなんとなく相性が合う」と感じるようになるのです。

相手に信頼できると思わせるために、相手の仕草や動きを真似することは誰にでも簡単に出来る事なので、すぐにでも試してみることができます。

暗示を入れて相手を思いどおりに誘導する

相手を観察、分析し、信頼関係を築けるようになったら、次に相手をこちらの思い通りにコントロールするという段階に入ります。

「すまないね、なんか催促したみたいで」という表現をよく耳にすることがありませんか?

例えば、 「何か部屋が暑いなぁ」と言って服の袖をまくると、相手は「冷房を入れましょうか」と言って、エアコンのスイッチを入れてくれるでしょう。

そこで、あなたは「暑いのでエアコンをつけてほしい」とは言っていません。

つまり、結果としては催促しているのですが、実際には相手があなたの話を聞いて、自発的にエアコンをつけてくれただけです。

つまり、相手に直接命令をせずに、相手に自発的にこちらがしてほしい行動を促しています。

これが思い通りに相手を誘導する技術です。

このように相手の心をコントロールして思い通りに誘導するのに最も重要なのは、相手が無意識のうちに行動するということです。

こちらから心理的な働きかけをすることで、相手がまるで自分で選んだかのように思わせなければなりません。

相手がこちらの働きかけに気付いてしまうと、その時点で相手の心をコントロールして誘導することはできなくなります。

それを実現可能にするのが、暗示です。

つまり、相手の心をコントロールして相手を誘導することとは、暗示のことなのです。

それでは、どの様にすれば相手に暗示をかけることができるのでしょうか。

それは、会話の中で相手に伝えたい情報を強調したり、変化を加える技術です。

そしてその方法で最も簡単にできるのが、話し方によって言葉を強調することです。

会話の中で出てくる特定の言葉を強調することで、相手の潜在意識にはたらきかけ、暗示的にイメージを植え付けて、相手を無意識のうちに誘導する技術です。

例えば、会話の中で特定の言葉を使うときだけ声を大きくしてみましょう。

特定の言葉を使う前よりも少し声が大きくなると、聞いている相手は無意識のうちにその差を感じ取って、印象に残るようになります。

逆に、声が小さくなると、話が聞き取りにくくなるので、より積極的に聞こうとするのです。

話すスピードの変化や声の調子にしても同様のことが言えます。

このように、言葉を強調することによって、相手の心に暗示を植え付けていきます。

また、特定の言葉を何度も使ったり、言葉に少しずつ変化を加えながら何度か繰り返すことも効果的です。

さらに、声の変化に表情や仕草なども合わせると、さらに強調しやすくなります。

強調したいところを身を乗り出して話すと、その部分の話が相手に強く印象に残るでしょう。

また、直接的な言葉ではなく、相手に植え付けたいイメージを連想させる言葉を会話の中に盛り込むのも効果的です。

普通の会話をしているようにしながらも、そこに潜在的な言葉を使って、思い通りの方向に相手の無意識を誘導する技術は、プレゼン、商談、交渉などの場面だけでなく、営業、販売業などの接客を中心とした場面でも有効活用できます。

また、この技術は会話だけでなく、企画書や提案書などの文書作成でも利用できます。

企画書に特定の言葉を繰り返し使ったり、表現を変えて繰り返し使うことで強調し、暗示として相手に伝えたい情報を埋め込み、相手からあなたの思い通りの答えを引き出すことができるのです。

無意識のうちに相手に暗示を植え付け、相手に気づかれないうちに相手の心をコントロールすることは、ビジネスにおいてもとても効果的な技術なのです。